代表的日本人

代表的日本人 (岩波文庫)

代表的日本人 (岩波文庫)


内村鑑三(1861-1930)が、西欧列強に日本人を紹介するために書いた英語の本を、日本語に訳した本です。短く、平易な文章なので、するっと読めます。

タイトルの通り、過去のすごい日本人を5人選抜し、偉人伝的に紹介しています。
その5人とは、西郷隆盛上杉鷹山二宮尊徳中江藤樹日蓮上人。歴史上の偉人は数多いのに、なぜこの5人か。たぶん、他人のために生きたという視点からすると、この5人にせざるを得なかったのではないか。しかも、海外に日本人を紹介するに当たり、そういった人たちをわざわざ選ぶというところに、明治に生きた日本人の気負いというものを、感じられるのではないか。そう思います。

たとえば、満員電車で立っているおばあさんに席を譲るのも、他人のために何かしたことになるわけですが、この5人はスケールが違う。「私」というものが、極限まで小さい。ほとんど無い。

こういう日本人が、今の時代に求められるのでは。そうまとめたいところですが、それではあまりに他力本願すぎる。自分でも何かしなければ! そう、おばあさんに席を譲るのもいいが、日本人として、もうちょっとスケール大きいことも。

しかし、5人のうち、西郷隆盛だけは著者とほとんど同時代の人で、しかも内乱を起こした賊軍の首領なのに、すでに偉人として評価されているとは、よっぽどすごい人だったんだろうな。