日本はなぜ地球の裏側まで援助するのか

日本はなぜ地球の裏側まで援助するのか (朝日新書 83)

日本はなぜ地球の裏側まで援助するのか (朝日新書 83)

「そんな途上国にくれてやるカネがあるんだったら、俺たちにくれ」(10ページ)

という書き出しで、この本は始まる。正直、わたしもそう思っている。自国の財政を省みれば、海外、それこそ地球の裏側にまで援助をする余裕はないはずだ。

日本のODAは97年以降、財政悪化を背景に減少を続けていて、07年度予算額は、ピーク時の96年と比較して38%減となっている。著者の主張は、この削減を打ち止めとし、環境案件や、低所得国・後発開発途上国については保健や医療への絞り込みと重点化を行う、というもの。

そもそも、なぜ援助するのかについては、資源を海外に頼ってるんだから、それらの供給元である途上国との友好関係を築くことは不可欠だ、というのが大前提。それに加えて「困っている人々がいるんだから助けなきゃ」という著者の心意気に感じ入るところがあった。この「困っている人々」の困り方が半端じゃないことも、データや事例で示されていて、説得力がある。

中国やアフリカなど、地域ごとにODAを論じているほか、日本の組織の問題(後書きでちょっと触れているが、書けないことも多いんだろうと推測する)、自衛隊の国際協力のあり方などにも触れている。

しかしながら、財政がこんな状況で、現在のレベルの国際援助を維持することさえ可能なのか、どうか。根本的に、その疑問はぬぐえない。

かつて、司馬遼太郎が、「日本の経済力は衰える。これからは、日本は人に親切にする国にならないと、生きていけない」というようなことをどこかで書いていた。経済協力ではない、親切。それって、どんなことなんだろうか。カネ以外に、困っている国になにができるんだろうか、ということを、ちょっと考えた。