大人の気骨

イギリス流 大人の気骨――スマイルズの『自助論』エッセンス版

イギリス流 大人の気骨――スマイルズの『自助論』エッセンス版


「天は自ら助くるものを助く」で有名な「自助論」から、名言名文のみを平易に訳した本。とても志の高い一冊でした。

原典は、明治時代に日本に紹介されたものなので、やはり時代を感じます。古くさい、というよりも、新鮮でした。全体として、個人の人格の形成が、良い社会、良い国家をつくるもとである、という考えが底流にあります。たとえば、冒頭の、「天は自ら助くるものを助く」の後には、「そのような生き方をすることで、社会に活力が生まれ、強い国となる」という論旨が続くわけです。

司馬遼太郎は、明治時代に関する様々なエッセイで、「個人の幸福が、そのまま国家の幸福だった時代」といっていましたが、この時代の雰囲気というのは、なんだかうらやましいな、と思います。現代日本でそういうことを唱えると、右傾であり、全体主義ととらえられかねない。少なくとも、政治家はこういったことを口にはできない空気が、日本にはあります。

「人間は、その行いによって、現在、未来の善の総量を増減させている。つまり、我々自身が、日々の行いによって、未来を決めている」という論旨に、感銘を受けました。当然といえば当然ですが、結局のところ、これでしか世の中を変えていくことはできないわけで。