仕事するのにオフィスはいらない

仕事するのにオフィスはいらない (光文社新書)

仕事するのにオフィスはいらない (光文社新書)


スマートフォンとクラウドで、ネットへのアクセサビリティを極限まで高め、オフィスを必要としない勤務形態を実現した人々の事例を紹介。また、そのための具体的なソフトやサービスを紹介している。

モバイル仕事術のノウハウ本、かと思ったが、それだけでなく、未来の雇用形態にまで言及する。情報通信の高度化で、物理的なオフィスが不要となれば、人々の意識も変わり、企業と個人のつきあい方、つまりは雇用形態も変わっていく、とする。

オフィスを不要とし、移動しながらビジネスをこなしていく人々を、本書では、遊牧民という意味の「ノマド」と呼ぶ。かっこいいなあノマド。たぶん、わたしのようなどんくさい、こてこての農耕民族型の人間ほど、ノマドに憧れるのだ。

しかし、よく考えると、わたしもノマドっぽいことしてるな。最近でこそ、大阪キタに関連会社の事務所ができたので、そこに出勤しているけど、ちょっと前までは安住の地など無かったのだ。だから、2kg超のノートPC、予備バッテリ、ACアダプタ、システム手帳、当座の資料をまとめたファイル、ハサミやホチキスをまとめた文房具セット、デジカメなどをカバンに入れ、営業に出かけ、あるいは喫茶店でPCをひろげて仕事をしていた。

でも、こんな重装備スタイルは、ノマドではない。最低限の軽装、下手すればスマートフォン一台で、移動先で華麗に仕事をこなすのがノマドだ。

といっても、多くの業種では、まだわたしのような重装備が必要なはず。iPhone一台で打合せに出かけることはできない。いざGMailから必要な資料を読み出そうとしてもたつき、挙げ句の果てに圏外、というのは悲惨すぎて目も当てられないからだ。紙に印刷した資料をカバンからさっと出すほうが、よほど話が早い。

また、仕事の効率化という面から、クラウドの使い方は大いに参考になるが、ノマド、またはシリコンバレーのビジネススタイルに、不必要に憧れる必要はないだろう。昨日の話の続きになるが、日本人には日本人のスタイルがあって、それを磨いて洗練するほうが、我々には合っているんじゃないか、と思うからだ。