世界史をつくった海賊

世界史をつくった海賊 (ちくま新書)

世界史をつくった海賊 (ちくま新書)


とてもエキサイティングでおもしろい本でした。

スペインをしのぎ、イングランドを世界帝国に押し上げる原動力となった海賊。国家権力との結託により、海賊という暴力装置が集金マシーンとなり、また戦争マシーンとなり、大航海時代をどのように生きたのか。そのあたりを描きます。

話しは変わりますが、わたしが幼少のころ、母親に以下のような話をききました。

「カズナリ(わたしのこと)や。我がタムラ家のご先祖様はねえ、実は山賊だったんだよ!」

「!?」

「山にこもり、周囲の村々から略奪を繰り返し、巨万の富を築いてねえ。そしてついに……」

ついに!? やはり悪いことしたから滅びるのか? いや、そもそも滅びたんならわたしは存在してないよね。いったいご先祖様は!?

「その金で官位を買い、貴族になったんだよ! だから我が家は由緒正しい家柄で……」

……いや、ぜんぜん由緒正しくないですよお母さん。

世界のあらゆる国々で、古来から、わたしの先祖のような事例は繰り返しあったことでしょう。互いに利用価値があれば、賊徒と国家という相反する集団同士でも、結託するわけです。

しかしながら、この本のタイトルにあるように「世界史をつくる」というほどにまで、大航海時代のイングランドの海賊が大きな力を及ぼしたのはなぜか。

英国主導による資本主義で世界は変わり、そこから流れ流れて今という時代があるなら、そういったことを考えてみてもいいかもしれません。

私は、イングランドのエリザベス女王がクレバーだなあと感じました。単に賊徒と結託して私腹を肥やすだけなら、世界史をつくるほどにまではならなかったでしょう。
また、海賊を生かすための情報戦が重大だ、という視点もおもしろいです。