「温暖化」がカネになる

「温暖化」がカネになる

「温暖化」がカネになる


志の高い一冊、と感じた。

温暖化によってどのようなことが予測されるのかをまとめた第一章、京都議定書で創設された排出権取引をまとめた第二章、資本主義経済と環境保全の両立を論じる第三章から成る。

特に、第二章では、温暖化への取り組みの意識が、日本と世界でまったく異なることを述べており、ショッキングともいえる。これは、明らかに政治とマスメディアの怠慢だろう。精緻を極めた金融工学を武器とする欧州のファンドにとって、日本は近い将来の超優良顧客であり、年間数千億円を投じて、彼らから排出権を購入することが真の環境保全なのかどうかを、政治もメディアも議論しなければならない。

個人的には、排出権を購入せず、目標未達の場合の罰則規定を、あえてかぶるのもいいだろうと思う。これは、未達量の1.3倍を次期約束期間に持ち越すというものだ。

その代わり、排出権を買うはずだったカネで、全力で温暖化対策を進めなければならない。本気で、ビジネスのように、もっと泥臭い言葉でいえば、カネ儲けぐらいの真剣さで。そこで結果を出せば、カネで排出権を買って解決するよりも、世界に対して胸を張れるのではないか。

第三章は、人類の経済活動からすると残された資源はそれほど多くはなく、それを鑑みた資本主義の構築が必要だ、とする。当然ながら、日本だけが循環型社会を構築すればいいわけではなく、世界的な枠組みでの取り組みが必要で、日本の場合は中国とうまく付き合う必要がある。

人口爆発や人類の日光占有率からすると、あと数十年のうちには人類の経済活動は限界に達するとしており、その限界をどれほど先に延ばすことができるか、京都議定書はその嚆矢といえるかもしれない。