野生の呼び声

野性の呼び声 (光文社古典新訳文庫)

野性の呼び声 (光文社古典新訳文庫)


セレブな家でリッチな生活を送っていた犬のバックが、ひょんなことからゴールドラッシュに涌くアラスカに売られてしまい、……という話。

シンプルなストーリーだが、ワクワクして楽しめた。昔、少年ジャンプで連載してた犬が主人公の漫画があったが、あんな感じ。

野生。英語でワイルド。わたしはその容貌から、かなりワイルドな人間なのでは、と人から思われるようだ。しかし、実際には都会派で、礼儀作法には気を使っており、ワイルドとは程遠い。だいたい、営業という仕事が、ワイルドで勤まるわけがないではないか。

たとえば、比較的街に近い山、六甲山あたりで野宿をしても、三日と持つまい。こんな人間のどこがワイルドなのか。ここで、声を大にして、わたしは都会派であると宣言したい。

どうしてここまで野生であるかどうかにこだわるのか。

人を「ワイルドだね」と評価する場合、その意味は大きく二つに分かれる。評価の対象が二枚目なら、「ワイルドだね」は最大級のほめ言葉だ。「かっこいいんだけど、ちょっと線が細いよねー」なら、まだわたしにも勝ち目があるかもしれないのだが(その目の割合がどの程度かはさておくとして)、これが、「かっこいいし、ワイルドなところがたまんないわ」とかだと、もういけない。勝ち目など、期待できない。

いっぽう、評価の対象が、二枚目でない場合、「ワイルド」は残念ながらあまりよくない評価だ。たとえば、「あしたのジョー」で、ジャングルからやってきたボクサーのハリマオとか、「北斗の拳」で好き放題やってるモヒカンの人たちとか、ああいった人たちと同じ方向性ですね、と言われているに等しい。

わたしなど、どれほど「ワイルドですね」と言われてきたことか。言うまでもなく、後者の意味合いでだ。いちばんひどいのになると、ワイルドを通り越して、「タムラ君って、肉食なんだねー」と言われたこともある。女の子から。

肉食。−−すでにヒト科でさえない! さすがにまずいねこれは。それ以来、わたしはワイルドととられるような言動は慎み、ひたすら「ワイルドではない」とアピールしているのだ。

ワイルドじゃないですよぜんぜん。都会派ですからほんとに。