煩悩リセット稽古帖

煩悩リセット稽古帖

煩悩リセット稽古帖


悪業を積む原因である「三毒」、つまり怒り・迷い・欲望の三つの感情を断ち、悟りを開くことを目指す、という本です。仏教をベースとした本ですが、心理学的、哲学的な要素が強く、宗教色は薄いです。というか、あとがきによれば、仏教とは元来、そういうものだったらしいですが。

たとえば、人類の文明がここまで発達したのは、欲望というものに突き動かされてのことではないのか。資本主義の現代日本で、欲望を捨てて生きていけるのか。わたしなどはそう思ってしまい、ともすれば欲望を肯定してしまいます。

しかし。本書では、次元の低い欲望と、次元の高い意欲というものは全く別物だとしており、この考え方はなんだかすっきりするな、と思いました。

また、執着を持てば持つほど、その対象を味わえなくなる、といいます。たとえば、あまりに腹が減って食欲が高まり、ついに食べ物にありついて貪り食らっても、味がわかりにくい。そうではなく、茶碗や箸の運び方にまで集中し、一瞬一瞬にまで意識を向けることで、食事は楽しくなる、と説きます。そうか。確かにそうかもしれないな。わかるような気もするなー、それは。

読み進めるにつれ、自分のいやな部分を次々に指摘されているようで、とても恥ずかしかったです。仏教は三毒を断つためのトレーニングメソッドだとのことで、だから本書のタイトルも「稽古帖」となっているのでしょう。わたしもトレーニングを積み、三毒を断とう、と思いました。