イヤな仕事もニッコリやれる陽明学―眠っている能力を引き出す極意

イヤな仕事もニッコリやれる陽明学―眠っている能力を引き出す極意

上司も見てるので事前に言っておくが、仕事がイヤで悩んでいるがらこの本を読んだわけではない。陽明学に興味があったからだ。

まあ、正味な話、仕事の中にはイヤな案件もないではない。というか、思い返せば結構あるような気もするな。ドラム缶200本調達しろとか。どうしようドラム缶。

それは置いておくとして、この本は大当たりだった。買ってよかった。たまに、著者に「ありがとう!」と言いたくなる本があるが、これはそうだ。

陽明学といえば司馬遼太郎の「峠」だ。「峠」で著者は、陽明学の峻烈さや限界を述べているが、本書ではそれは誤解だという。だけでなく、三島由紀夫童門冬二も誤解しているという。このあたりは、本書を読めば「なるほどな」と理解できるが、わたしにとって本書のポイントはそこではなかった。実践。机上の理論より、実践を知りたいのだ。

そこで著者は、陽明学らしい生き方をしている人として、桜井章一という人を上げている。同氏は、麻雀の代打ちとして20年不敗という人。この人が、「私欲は身を滅ぼす」「必要以上のお金があると人間性が崩れる」「自分に負けて麻雀に勝とうなんて大間違いだ」などと述べ、そういう生き方を貫いてきたという。

企業のトップとかお坊さんとかでなく、代打ち、つまりはギャンブラーがこういう生き方を実践していることに、驚いた。普通、人は必要以上のお金を求めて打つはずで、だからこそギャンブルは成立するはずなのだが。

桜井氏の生き方は、ビジネスにおきかえてもそのまま通用する。実践してこそ陽明学。わたしも自省しなければ。

もう一人、陽明学らしい生き方をしている人として、イエローハットの元社長、鍵山氏を上げている。「凡事徹底」「率先垂範」など。陽明学らしく、実践しているところに重みがある。ここでも、自省するところが多々あった。

「損得や好き嫌いでものを考えるのでなく、中庸で」というところが本書の眼目であり、タイトルの「イヤな仕事も〜」にかかってくるのだろう。

そのほか、王陽明の生き様やその詩。ボクシング史上、最もめざましい復帰を遂げた男、ジム・ブラドックの話など、逆境でもモチベーションが上がる事例が紹介されていてる。

よし、ドラム缶200本ぐらいなんとかするぜ!!