男の作法

男の作法 (新潮文庫)

男の作法 (新潮文庫)


著者と編集者の会話がベースとなっているので、居酒屋における上司と部下の会話的な部分も多々ある。それはそれで楽しいが、この著者だけにそれだけでは終わらず、要所要所で「はっ!」とするところがある。

天ぷらの食べたかとか、万年筆に金をかけろといったくだりは有名らしく、あちこちで引用を見かける。

わたしの場合、天ぷらの食べ方は大丈夫だ。天ぷらに限らず、だいたいの食べ物は、著者が言う作法に則って食している。というか、よく考えると揚げたての天ぷらを食べさせる店に行ったことがないな。今度行ってみるか。敷居高そうだけど。

一方、問題は万年筆のほうだ。万年筆には金をかけろ、男の武器であり武士にとっては刀みたいなものだ、特にビジネスマンなら、と著者は言う。

いったい、どれほどの男たちが、この言葉に背中を押され、高価な万年筆を手にしてきたのだろうか。わたしも「まいったなあ、でも正太郎が言うなら仕方ないか」と、モンブランのマイスターシュテュック149を買おうと思ったんだけど、阪急デパートの店頭であまりの価格に驚き、撤退した。ここで買えないところが、わたしの限界だろうか。

「男を磨く」ということについても、著者なりの具体的な回答があって、深く感動した。たとえば、タクシーに乗ったとして、運転手に100円でもチップを上げることが男を磨くことになるという。

チップを上げる→運転手いい気分に→交通事故のリスク減少、という図式で、100円が社会に良い影響をもたらす。もちろん、微々たる効果かもしれないが、それを考えて実行することが、男を磨くということらしい。

たった100円だが、これは難しい。100円ぐらいは惜しくはないが、チップを渡すという行為が、難易度が高い。でも、これが自然にできればかっこいいだろうなあ。今度やってみようかな。